こんにちは。元・不動産営業のてつです。
- 繰り上げ返済すれば、心理的に安心する!
- 少しでも早く住宅ローンは返すべき!
- 早めに返済終えた方が老後は安心!
こんなふうに、借金返済(住宅ローン)から早く逃れたいため、「繰り上げ返済」をした方がトクすると考える人は多いです。
もちろん、住宅ローンから解放される感覚は何ものにも代え難いです。その開放感から、借入金なんてない方がいいという人も多いです。
しかし、低金利が続く現在、広い視野で考えると、繰り上げ返済は必ずしもおトクといえないのです。
しかも、フラット35のような長期固定で借りていながら、繰り上げ返済をする行為って、矛盾している行為ですからね。
端的に結論から言います。
繰り上げ返済がトクにならない理由は、住宅ローンの金利以上で投資利率で運用すれば、資産を殖やすことができ、おトクになるからです。
繰り上げ返済に使うお金を、もし高い利率の投資先に投下して、一定期間後に回収できれば、差分(高い利率ー住宅ローンの金利)が儲けとなり、資産構築ができます。
この資産構築する感覚って、おそらく、自分で商売をしたり、投資の経験がない人とっては、若干わかりにくいかもしれません。でも、理解の本質はそんなに難しくありません。
本記事では、「繰り上げ返済ってした方がいいの?」と悩むあなたに向けて、住宅ローンの繰り上げ返済をしない方がいい理由をわかりやすく解説します。
目次
繰り上げ返済と投資運用のケースとで比較
繰り上げ返済する・しないの比較
繰り上げ返済するケース①と、繰り上げ返済せずに投資運用するケース②を想定し、35年後の貯蓄残高を比較してみたいと思います。
前提条件
- 借入金:3,000万円・返済期間:35年
- 全期間固定金利(35年間):1.71%
- 毎月の返済額:9万5千円
- 借入から3年後、手元に300万円
3年後に300万円を繰り上げ返済したすると、返済期間は52ヶ月間(4.4年間)短縮します。期間が短縮したことで、毎月の返済額(9万5千円)が浮きます。その金額を52ヶ月(4.4年)の間、インデックス投資などで毎月積み立て運用します。
繰り上げ返済せずに投資運用するケース②
3年後に300万円を繰り上げせず、その300万円をインデックス投資などで32年間に運用します。
運用利率は共に3%の利率。年複利で、期末の利息込で複利毎課税(20.315% )を想定します。
この前提では、ケース①では35年後の貯蓄残高は516万円です。一方、ケース②だと35年後の貯蓄残高は638万円になります。
ケース②ーケース①=122万円
この結果、繰り上げ返済をせず、利率の高い運用先に投資すれば、手元の現金を122万円分だけ増やせることがわかります。
ちなみに、運用利率を5%で想定すると、ケース①は532万円、ケース②は1047万円になり、その差は515万円となります。
32年間住宅ローンの返済を続けたとしても、繰り上げ返済しない方がおトクであることがわかります。
失う資産構築の選択肢
俗に、一般的な住宅ローン指南書では昔からよく、
「繰り上げ返済は早ければ早いほどおトクです!」
と言われますが、この言葉通り、早い段階で多額の繰り上げ返済をしてしまうと、高い利率で長期間運用できる選択肢を、捨ててしまいます。
バブル期の住宅ローン金利が高い時期ならともかく、現在のように住宅ローン金利が低い状況なら、投資に回した方が断然有利で、安定的な資産形成になるのです。
なお、投資経験がある人ならわかると思いますが、前提条件の運用利率3%って、決して高い数字ではなく、むしろかなり低い見積もりの数字であることがわかると思います。(※投資経験がないと実感しにくいと思いますが・・・。)
運用で増やせないと考えるのに長期固定金利を選択する矛盾
一般的な住宅ローン指南書では、フラット35などの長期固定金利で借りることを推奨し、さらには、早めの繰り上げ返済も推奨していることが多いです。
この推奨の理由って、とりも直さず、以下のような理由です。
- 将来金利が上昇する可能性があるから変動金利はダメ!
- 借金は悪だから、頭金2割を入れてローンは少なめに!
- 繰り上げ返済すれば、利息の支払いが減る!
- 借金が早くなくなれば、老後はその分安心!
これらの理由って、感覚的に誰でもわかるものでしょう。あなたも理解できますよね?
でも、これらの理由って、よくみてみると、実は論理的に矛盾しているんです。
だって、金利が上がる状況を避けるために、変動金利ではなく、あえてフラット35などの長期固定金利を選んだわけです。
もし将来、金利が上がると考えるならば、住宅ローンの金利だけ上がるなんてことはありませんから。
つまり、金利が上がるなら、国債の利回りやインデックス投資利回りなどの他の運用利率も上がります。給与水準も然りです。
つまり、住宅ローンの金利が上がれば、他の投資利率だって上がるのです。
だったら、手元現金を高い利率の投資運用に回した方がトクするわけです。前項で説明した通り、運用利率が3%から5%になるだけで、資産が数百万円増えるのですから。
逆にもし「投資の資産運用でリターンなんてカンタンに得られない!」と主張するのならば、それはそれで主張としてはアリです。
でも、それは、
リターンが得られない=景気は停滞したまま=金利は上がらない
ということになるわけです。
金利が上がらないと考えるならば、フラット35などの長期固定金利を選ばずに、変動金利にした方が利息の支払いを断然抑えられるはずです。
わかってもらえますよね?
つまり、長期固定金利を選びつつ、繰り上げ返済を推奨するのは、全くもって矛盾した行為だと言えるのです。
繰り上げ返済のデメリット
資金繰りに影響が出てデメリットになる場合
推奨される住宅ローンの繰り上げ返済もデメリットがあります。
例えば、近い将来に以下のような事情がある場合にはデメリットとなります。
- 子供が生まれるため、配偶者が休職する
- お子さんの進学があり、教育資金が必要
- 車を購入する予定がある
- 設備が傷み、リフォーム予定がある
- 勤め先の業績悪化で収入が減るかもしれない
一時的に収入が減ったり、多額の出費が予定されるなどの事情がある場合、繰り上げ返済すると、生活収支の資金繰りに影響が出てきます。
かつて私のお客さんの中にも、繰り上げ返済した後に、複合的な事情が重なり、固定資産税などの税金が払えず、差し押さえを受け、住宅ローンが返せず、自宅売却してしまった人もいました。
普段、生活する上では、毎月の支出は限られますので、繰り上げ返済をして、住宅ローンの返済負担を軽くしようとつい思いがちになります。
しかし、共働き夫婦で揃って仕事が忙しい時は、近い将来の出費も案外見逃しがちなものです。
こうした場合には、資金繰りとしての手元現金がかなり重要になります。繰り上げ返済はデメリットにもなることを理解しておいたほうが良いのです。
かなり例外的だが、こんなケースもある
ケースとしては少ないですが、ローンを完済するために、手元資金を全て繰り上げ返済にあてた後、ローン返済者に万が一の事があった場合、家は残せても、現金は残せません。
民間銀行の住宅ローンのほとんどでは、団体信用生命保険が付帯しています。もし手元現金を繰り上げ返済にあてなければ、家も残せて、現金も残せることも考えられます。
こうした住宅ローンの特長を理解しておけば、やみくもに繰り上げ返済をすることは、デメリットにもなり得ることもわかります。
例外的ケースも含めて、繰り上げ返済のデメリットをわかっておくと、冷静な判断ができます。
繰り上げ返済をした方がいい場合
これまで、住宅ローンの繰り上げ返済はしない方がいいことを書いてきました。
しかし、逆に繰り上げ返済をした方がいい人もいます。
- 資産運用に疑問を持っている人
- 資産運用が面倒な人
- 資産運用に関心がない人
- 資産運用ができない人
という人です。
こうした人は、資産運用をした方がトータル的にトクと言っても、資産運用を実践することは難しいと思います。資産運用をする・しないは、個人の嗜好や考え方によりますので。
したがって、繰り上げ返済をしないより、した方が利息が減りますので、繰り上げ返済をした方がいいです。
(※だからと言って、トクしているわけではありませんがね・・)
繰り上げ返済はしない方がいい【まとめ】
繰り上げ返済はしない方がいい理由、わかってもらえましたか?
金利が上がることを見込み、長期の固定金利などですでに借りているのであれば、繰り上げ返済するより、投資などで運用した方が断然有利になることがわかったかと思います。
実は、私も大学生の頃にリボ払いで苦しんだ経験で、借金に対する抵抗が強くあった時期があったんです。
でも、社会人になって、仕事で中小企業の経営者と話すようになってから、わかったんですよ。
意外にも、経営者たちは、手元に多額の現金や株式を持っていながらも、低い金利の住宅ローンを借りている現実にね!
経営者って、事業に投資を行なっているので、お金を殖やそうとする能力や感覚が研ぎ澄まされているんですよね。
そうやって、巷の中小企業の経営者やフリーランスなどは、お金を殖やしているんですね!
一般の人には知られないようにして・・・(笑)
そういえば、私が勤務していた大企業の正社員も、投資で運用している人って多くいましたね。
ちまたの繰り上げ返済一辺倒の考えに惑わされると、あなたの大事な資産を目減することにもなりかねませんからね。気をつけてくださいね!
本記事を通じて、ぜひ、あなたの資産を殖やしていったもらえればと思います。